お役立ちコラム
USEFUL COLUMN
製造業の課題を解決するステンレスの種類と見分け方を紹介

ステンレスは錆びにくく加工しやすい金属として、多くの製品に使われています。
しかし、種類が多くてどれを選べばよいか分からないという悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
適切な鋼種を選定しないと、早期の腐食やコスト高につながるリスクがあります。
本記事では、ステンレスの基本的な特徴から5つの系統、主要鋼種の性能比較、現場で使える見分け方まで解説します。
ぜひ最適な材料選定にお役立てください。
ステンレスとは錆びにくさを追求した合金鋼
ステンレスは鉄を主成分とし、錆びにくい性質を持たせた合金鋼のことです。
英語ではStainless Steelと表記され、直訳すると「錆びない鉄」という意味になります。
ステンレスがなぜ錆びにくいのかという仕組みについて、以下の3つを解説します。
- 鉄にクロムを加えて耐食性を高めている
- 表面の不動態皮膜が内部を保護している
- JIS規格による記号の意味を理解する
まずは、ステンレスの基本的な定義と構造を見ていきましょう。
鉄にクロムを加えて耐食性を高めている
ステンレスは、鉄にクロムという金属を10.5%以上含ませた合金です。
鉄は単体では酸化しやすく、すぐに赤錆が発生してボロボロになってしまいます。
しかし、クロムを加えることで酸素と結合しやすくなり、鉄よりも先に表面で酸化反応を起こします。
この性質により、鉄の弱点である腐食の進行を大幅に遅らせることが可能です。
含有するクロムの量が多いほど、あるいはニッケルなどのほかの元素を加えることで、さらに耐食性は向上します。
使用環境に合わせて適切な成分配合の鋼種を選ぶことが、製品の寿命を延ばす秘訣となります。
表面の不動態皮膜が内部を保護している
ステンレスが錆びにくい最大の理由は、表面に形成される「不動態皮膜」という薄い膜にあります。
この膜はクロムが空気中の酸素と結びついて作られるもので、厚さはわずか数ナノメートルしかありません。
しかし、化学的に極めて安定しており、酸素や水を遮断して内部の鉄を守る強力なバリアとして機能します。
もし加工や傷によって皮膜が破れても、空気中に酸素があれば瞬時に再生される自己修復機能を持っています。
ただし、塩分や酸が長時間付着すると皮膜が破壊され、錆が発生する原因となるため注意が必要です。
JIS規格による記号の意味を理解する
図面や仕様書で見かける「SUS」という記号は、日本のJIS規格で定められたステンレス鋼の名称です。
正式にはSteel Special Use Stainless(Steel Use Stainless)の略で、続く3桁の数字が鋼種の分類を示します。
たとえば300番台はオーステナイト系、400番台はフェライト系やマルテンサイト系を示します。
末尾に付くアルファベットも重要な意味を持ち、「L」は炭素量を低減し、溶接時の鋭敏化による腐食(粒界腐食)を抑制した鋼種です。
「J」は日本独自の改良鋼であることを表します。
これらの記号を正しく読み解くことで、その材料が持つ特性や適した用途を瞬時に判断できます。
代表的なステンレスの種類と特徴一覧
ステンレスは含有する成分や金属組織によって、大きく5つの系統に分類されます。
- オーステナイト系は錆びにくく加工性が高い
- フェライト系は磁性がありコストが安い
- マルテンサイト系は焼き入れで硬度が増す
- オーステナイトフェライト系は強度に優れる
- 析出硬化系は熱処理によって硬化させる
それぞれの特徴を把握し、自社製品に最適な種類を見つけましょう。
オーステナイト系は錆びにくく加工性が高い
オーステナイト系は、ステンレスの中でもっとも生産量が多く、広く普及している種類です。
代表的な鋼種にはSUS304があり、クロムとニッケルを含んでいるため耐食性に優れています。
延性があり粘り強いため、曲げ加工や絞り加工がしやすいことも特徴です。
非磁性ですが、加工誘起マルテンサイト変態によって加工箇所が磁性を帯びる場合があります。
溶接性も良好で、家庭用品から建築材料、化学プラントまで幅広い分野で利用されています。
バランスの取れた性能を持つため、迷った際の第一候補となる鋼種です。
フェライト系は磁性がありコストが安い
フェライト系は、クロムを主成分とし、ニッケルを含まないため比較的安価に製造できる種類です。
代表的な鋼種はSUS430で、オーステナイト系に比べると耐食性はやや劣りますが、一般的な環境下では十分な性能を発揮します。
磁石につく性質があり、熱膨張率が低いため熱による変形が少ない点も大きな特徴です。
応力腐食割れが発生しにくいというメリットもあります。
厨房機器や自動車の排気系部品、建築内装材など、コストを抑えつつ一定の耐食性が求められる用途で重宝されています。
マルテンサイト系は焼き入れで硬度が増す
マルテンサイト系は、フェライト系と同様にクロムを主成分とするステンレスです。
焼き入れと焼き戻しの熱処理によって、硬度を大幅に高められることが特徴です。
代表的な鋼種には、SUS410やSUS420J2があり、耐摩耗性に優れています。
一方で、耐食性はほかの系統に比べて劣るため、使用環境には注意が必要です。
また、溶接性もあまりよくありません。
おもな用途として、その硬さを活かして包丁やナイフなどの刃物類、工具や機械部品、ベアリング・ブレーキディスクなどに使用されています。
オーステナイトフェライト系は強度に優れる
オーステナイト系とフェライト系の両方の組織をあわせ持つことから、二相系ステンレスとも呼ばれます。
オーステナイト系の優れた耐食性と、フェライト系の高い強度を兼ね備えているのが特徴です。
とくに海水に対する耐食性が高く、応力腐食割れにも強い性質を持っています。
強度はオーステナイト系の約2倍あり、薄肉化による軽量化が可能です。
価格はニッケル含有量が少ないため、オーステナイト系よりも安定しています。
化学プラントや海水淡水化装置、橋梁などの過酷な環境下で使用される構造材に適しています。
析出硬化系は熱処理によって硬化させる
析出硬化系は、熱処理によって金属組織内に化合物を析出させ、硬度と強度を高めるステンレスです。
代表的な鋼種はSUS630で、銅などが添加されています。
オーステナイト系に近い耐食性を持ちながら、マルテンサイト系並みの硬さを実現できるのが魅力です。
加工後に熱処理を行うことで変形を抑えつつ高強度化できるため、精密部品の製造に適しています。
航空機のエンジン部品やシャフト、タービンブレードなど、高い信頼性と強度が求められる先端産業分野で多く採用されています。
主要鋼種の性能比較と使い分けのポイント
現場でよく使われる代表的な鋼種を、コストと性能の視点から比較検討します。
- SUS304はもっとも汎用的でバランスがよい
- SUS430は安価だが耐食性がやや劣る
- SUS316は海水や薬品への耐性が高い
- それぞれの価格差と用途適正を比較する
環境に合わせた最適な選択をすることで、過剰スペックによるコスト増を防げます。
SUS304はもっとも汎用的でバランスがよい
SUS304は「18-8ステンレス」とも呼ばれ、クロム18%、ニッケル8%を含むオーステナイト系の代表格です。
耐食性、溶接性、機械的性質のバランスがよく、特殊な環境でなければ多くの用途に対応できます。
市場での流通量も圧倒的に多いため、入手性がよく納期管理がしやすい点もメリットです。
しかし、海水や塩分濃度の高い環境では錆びる可能性があります。
一般的な産業機械や家庭用品ではSUS304が選択肢となる場合が多い一方、使用環境や要求性能によっては他グレードの検討が必要です。
SUS430は安価だが耐食性がやや劣る
SUS430は「18クロムステンレス」とも呼ばれるフェライト系の代表的な鋼種です。
ニッケルを含まないため、SUS304と比較して材料費が安く、費用削減の有力な選択肢となります。
磁石につくため、リサイクル時の選別が容易であるという利点もあります。
ただし、耐食性や加工性はSUS304に及びません。
とくに絞り加工のような激しい変形を伴う用途には不向きです。
水回りでも常時水に触れるような場所ではなく、屋内の厨房板金や家電製品の外装など、適度な耐食性が求められる箇所での採用が推奨されます。
SUS316は海水や薬品への耐性が高い
SUS316は、SUS304にモリブデンを添加し、ニッケルの含有量を増やした鋼種です。
「18-12-2.5ステンレス」とも呼ばれ、モリブデン添加により、塩化物への耐性である「耐孔食性」が飛躍的に高まっています。
海岸近くの設備や化学薬品を扱うプラントなど、腐食リスクの高い環境下で真価を発揮するものです。
さらに炭素量を減らしたSUS316Lというグレードもあり、こちらは溶接部の耐食性がさらに向上しています。
SUS304では錆びてしまうような過酷な条件下では、初期コストがかかってもSUS316を選ぶことで、メンテナンス費用の削減につながります。
それぞれの価格差と用途適正を比較する
価格面では、一般的にSUS430がもっとも安く、次いでSUS304、もっとも高価なのがSUS316となります。
ニッケルの相場変動により価格差は変わりますが、SUS304を基準にするとSUS430は数割安く、SUS316は数割高い傾向にあります。
屋内でコストを重視するならSUS430、汎用的な用途ならSUS304、屋外や特殊環境ならSUS316という使い分けが基本です。
オーバースペックは無駄なコストを生みますが、反対にコストを削りすぎて早期に錆びれば信用問題になります。
現場で役立つステンレス種類の見分け方
見た目だけでは区別がつかないステンレスですが、混在してしまった場合や現物確認が必要な場面があります。
現場で手軽にできる方法から正確な分析まで、以下のような判別手法を知っておくと便利です。
- 磁石を使って簡易的に系統を判別する
- 専用の試薬を用いて成分を確認する
- ミルシートで正確な材質情報を得る
- 加工による磁性の変化に注意する
それぞれ見ていきましょう。
磁石を使って簡易的に系統を判別する
もっとも手軽で一般的な方法は、磁石を使うことです。
フェライト系のSUS430やマルテンサイト系のSUS410は磁石に強くつきますが、オーステナイト系のSUS304やSUS316は基本的にはつきません。
現場で「これは304か430か」を即座に判断したい場合に有効です。
ただし、この方法はあくまで系統を分けるための簡易的なものです。
同じオーステナイト系であるSUS304とSUS316は、磁石だけでは見分けられません。
また、後述するように加工状態によってはオーステナイト系でも磁性を持つ場合があるため、過信は禁物です。
専用の試薬を用いて成分を確認する
SUS304とSUS316のように磁性では区別できない鋼種を見分けるには、モリブデンチェッカーなどの専用試薬が有効です。
ステンレスの表面に試薬を滴下し、通電させて色の変化を観察します。
SUS316に含まれるモリブデンに反応して赤色に変色すれば、SUS316であると判断できます。
この方法は非破壊で比較的安価に行えるため、受け入れ検査や在庫管理の現場で重宝されるものです。
ただし、試薬の種類によっては劇物に該当する場合があるため、取り扱いには十分な注意と正しい知識が必要です。
ミルシートで正確な材質情報を得る
もっとも確実で信頼性の高い方法は、材料メーカーが発行する「ミルシート(鋼材検査証明書)」を確認することです。
ここには化学成分の分析値や機械的性質の試験結果が詳細に記載されており、その材料がJIS規格を満たしているかを証明します。
製品納入時にミルシートの提出を求めることは、品質保証の基本です。
現物の切れ端などから調査が必要な場合は、専門の分析機関に依頼して成分分析を行うのが確実です。
トラブルを未然に防ぐためにも、公的な書類やデータに基づく管理体制を整えておきましょう。
加工による磁性の変化に注意する
オーステナイト系のSUS304は本来磁石につきませんが、曲げ加工やプレス加工を行うと、加工した部分が磁性を持つことがあります。
これは「加工誘起マルテンサイト変態」と呼ばれる現象で、金属組織の一部が変化するために起こります。
そのため、磁石がついたからといって、必ずしもSUS430などのフェライト系であるとは限りません。
とくにコーナー部分や絞り加工された箇所は磁気が強くなる傾向があります。
この性質を知らずに判定すると誤った判断を下すおそれがあるため、加工履歴を考慮して確認を行うことが大切です。
まとめ:ステンレスの種類を理解して最適な鋼種を選定しよう
ステンレスの選定や調達は、専門知識が必要で手間がかかるものです。
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